厚生年金の仕組みと“見えない負担”
日本の年金制度は、老後の生活を支える重要な柱です。しかし、その仕組みや負担の内訳について、十分に理解されていないことが多いのが現状です。特に、厚生年金における会社負担分の存在は、見落とされがちです。サラリーマンが加入する厚生年金は払い損でじゃないかと疑問視している方も多いと思います。今回は、厚生年金と国民年金の負担と給付を比較し、会社負担分の実態を明らかにすることで、厚生年金が本当に「得」なのかを検証します。
厚生年金と国民年金の負担と給付を比較
厚生年金の仕組みと“見えない負担”
厚生年金は、会社員や公務員が加入する公的年金で、保険料は労使折半で支払われます。つまり、従業員が負担する保険料と同額を、会社も負担しています。しかし、この会社負担分は、実質的には従業員が受け取るはずだった給与から支払われている可能性があります。企業は人件費全体を考慮して給与を設定するため、会社負担分の保険料は、従業員の総報酬に含まれていると考えられます。
厚生年金と国民年金の負担と給付の比較
納付額(はらう額)
年収 | 月収 | 厚生年金月額 (個人負担) | 厚生年金月額 (会社負担) | 国民年金月額 |
(万円) | (万円) | (円/月) | (円/月) | (円/月) |
300 | 25.0 | 22,875円 | 22,875円 | 16,520円 |
500 | 41.7 | 38,145円 | 38,145円 | 16,520円 |
700 | 58.3 | 53,415円 | 53,415円 | 16,520円 |
国民年金 | – | – | – | 16,520円 |
※厚生年金の保険料は標準報酬月額に保険料率18.3%を掛け、労使で折半します。
※国民年金は年収に関わらず納付額は一律です。
給付額(もらえる額)
年収 | 月収 | 生涯納付額 (個人+会社) | 給付 (厚生年金部分) | 給付 (国民年金部分) | 給付額合計 |
万円 | 万円 | 万円/生涯 | 万円/年 | 万円/年 | 万円/年 |
300 | 25.0 | 2,361 | 74.4 | 79.8 | 154 |
500 | 41.7 | 3,934 | 124.0 | 79.8 | 204 |
700 | 58.3 | 5,508 | 173.6 | 79.8 | 253 |
国民年金 | – | 793(個人のみ) | – | 79.8 | 79.8 |
比較・分析ポイント
1. 負担額の違い
• 厚生年金は年収に応じて保険料が増えるため、高収入の人ほど生涯の納付額が大きくなります。
• 例えば、年収300万円では約1,180万円、700万円では約2,754万円の生涯負担。
• 一方、国民年金は一定額(2024年時点で月額16,520円)であるため、生涯負担額は約793万円に固定されています。
2. 年間受給額の違い
• 厚生年金は報酬比例部分が加わるため、国民年金のみの場合と比べて受給額が大幅に増加します。
• 例えば、年収500万円の場合、年間約2,038,335円を受け取ることができます。
• 国民年金のみでは年間約798,000円と差が大きいです。
3. 元が取れる年齢
• 納付額に対して受給額が元を取れる年齢は、厚生年金の場合、高収入ほど遅くなります。
• 年収300万円では約72.7歳、500万円では約74.7歳、700万円では約75.9歳。
• 国民年金は約74.9歳と一定で、厚生年金より早く元が取れる場合もあります。
結論: 見えないコストをどう考えるべきか
会社負担分の影響
会社が負担する厚生年金保険料は、従業員の給与に影響を及ぼしている可能性があります。企業は総人件費を考慮して給与を設定するため、会社負担分の保険料は、従業員が本来受け取るべき給与から差し引かれていると考えられます。つまり、会社負担分は「見えない負担」として、従業員自身が実質的に負担している可能性が高いのです。
見えないコストをどう考えるべきか
厚生年金は、会社負担分を含めると、国民年金よりも高い保険料を支払っています。しかし、その分、将来的な受給額も増加します。ただし、受給額が納付額を上回るためには、長寿であることが前提となります。また、会社負担分が実質的に従業員の負担であると考えると、厚生年金が必ずしも「得」とは言えない側面もあります。個々の働き方や将来設計に応じて、年金制度を理解し、適切な資産形成を行うことが重要です。
出典
• 厚生労働省年金制度解説資料
• (kigyolog.com)
• 日本年金機構公表データ

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