1. 序章
気候変動は、今や国境を超えた人類共通の課題となっています。産業革命以降の経済成長に伴い、地球温暖化が進行し、気象災害や生態系の破壊が世界中で深刻化しています。その原因とされる温室効果ガス、特に二酸化炭素(CO₂)の排出削減は、企業にとって避けて通れない責務となっています。
2024年にアゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29では、先進国と新興国がそれぞれ異なる立場から気候変動対策について議論を重ねました。本記事では、先進国と新興国の企業が直面する課題と、CO₂排出削減に向けた具体的な取り組みを解説し、相互協力の重要性を探ります。
2. 先進国の取り組みと課題
法規制と市場圧力の影響
先進国の企業は、強力な規制と市場圧力にさらされています。ヨーロッパ連合(EU)は「Fit for 55」政策を推進し、2030年までに温室効果ガス排出を1990年比で55%削減することを目指しています。アメリカでもバイデン政権の下、カーボンプライシング(炭素価格付け)の導入が議論され、企業には削減目標達成のための明確なロードマップが求められています。
具体的な取り組み事例
1. Apple
Appleはサプライチェーン全体での脱炭素を進めています。同社は2030年までにすべての製品でカーボンニュートラルを達成する目標を掲げ、サプライヤーに対して再生可能エネルギーの使用を義務付けています。
2. Microsoft
Microsoftは、二酸化炭素排出を相殺するだけでなく、過去に排出したCO₂を除去する「カーボンネガティブ」を目標としています。これには炭素回収貯留技術(CCS)の導入が含まれています。
課題
一方で、企業にとって排出削減はコスト増加を伴います。製造コストが上昇すれば、国際競争力が低下するリスクがあります。また、新たな技術開発には巨額の投資が必要であり、特に中小企業にとっては負担が大きいとされています。
3. 新興国の現状と独自の課題
経済成長と環境対策のジレンマ
新興国では、経済成長が依然として最優先課題です。インフラ整備や産業発展のため、石炭や石油といった化石燃料の使用が広がっています。しかし、このことがCO₂排出量の増加を招き、国際的な批判を浴びる原因にもなっています。
具体的な取り組み事例
1. インド:再生可能エネルギーの導入
インド政府は、2030年までに再生可能エネルギーの発電容量を500GWに増やす計画を発表しました。企業レベルでは、Tata Powerが太陽光発電プロジェクトを拡大し、国内外の需要に応えています。
2. ブラジル:森林保護と企業活動
ブラジルでは、森林伐採がCO₂排出の大きな要因となっています。農業企業の中には森林保護に取り組む動きもあり、例えばJBSは森林伐採ゼロ政策を掲げていますが、その実行には課題が残ります。
国際支援の不足
多くの新興国では、排出削減のための資金や技術が不足しています。COP29では、先進国による年間3,000億ドルの支援目標が設定されましたが、これは必要額に遠く及ばないとされています。
4. 先進国と新興国の相互協力の必要性
技術移転と資金支援
先進国の企業は、新興国に対して先進的な技術を提供し、排出削減を後押しする役割を果たすべきです。例えば、再生可能エネルギー技術や省エネ設備の導入を支援することで、新興国の成長と持続可能性を両立させることができます。
成功事例
1. グローバルサプライチェーンでの協力
日本のトヨタ自動車は、インドネシアのパートナー企業と共同でハイブリッド車の製造プロジェクトを進めています。これにより、現地のCO₂排出量削減と雇用創出を両立しています。
2. 多国間イニシアチブ
「グリーンクライメイトファンド(GCF)」を通じた資金提供は、新興国での気候プロジェクトを後押しする好例です。
5. 結論
企業にとって、CO₂排出削減はもはや選択肢ではなく必須の課題です。しかし、その達成には先進国と新興国の連携が欠かせません。
先進国企業の技術と資金、新興国の成長市場と潜在力が融合すれば、地球規模での持続可能な成長が実現可能です。私たち一人ひとりも、これらの取り組みを支援し、より良い未来を築くために行動すべき時です。
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