2024年4月、三井化学株式会社は市原工場(千葉県市原市)のフェノールプラントを2026年度までに停止する決定を発表しました。 この決定の背景には、原料価格の高騰と海外メーカーとの競争激化があり、国内の関連企業や業界にも大きな影響を及ぼすと予想されます。
採算性悪化の要因:原料価格の高騰
フェノールの製造には主にベンゼンとプロピレンが使用されます。近年、これらの原料価格が高騰し、製造コストの増加を招いています。
• ベンゼン:2022年以降、原油価格の上昇や需給バランスの変動により、ベンゼン価格は上昇傾向にあります。
• プロピレン:同様に、石油化学製品の需要増加や供給制約により、プロピレン価格も高騰しています。
これらの原料価格の上昇に対し、フェノールの製品価格への転嫁が難しく、採算性が悪化しました。特に、中国を中心としたアジア地域での新規プラント稼働による供給過多が、製品価格の下落を招き、収益確保が困難となりました。
撤退による影響:関連企業と業界への波及
三井化学のフェノール事業撤退は、国内の関連企業や業界に以下の影響を及ぼすと考えられます。
1. 川下企業への影響:フェノールはビスフェノールAやフェノール樹脂の原料として使用されており、これらを製造する企業などが影響を受ける可能性があります。供給源の減少により、原料調達コストの上昇や供給不安が生じる懸念があります。
2. 輸入依存度の増加:国内生産量の減少に伴い、フェノールの輸入依存度が高まることが予想されます。これにより、海外メーカーからの調達が増加し、為替変動や国際的な供給リスクにさらされる可能性があります。
3. 価格競争の激化:海外メーカーとの競争が一層激化し、国内市場での価格競争が進むことで、他の国内フェノール製造企業なども採算性の確保が難しくなる可能性があります。
今後の展望と対策
国内の化学産業が競争力を維持・向上させるためには、以下の対策が求められます。
• 高付加価値製品へのシフト:汎用品から高機能・高付加価値製品への転換を図り、価格競争から脱却する。
• 生産効率の向上:最新技術の導入や設備投資により、生産コストを削減し、競争力を強化する。
• サプライチェーンの多様化:輸入先の多様化や国内他社との連携を強化し、供給リスクを分散する。
また、政府や業界団体による支援策の検討も必要です。例えば、研究開発への助成金や税制優遇措置を通じて、企業の競争力強化を後押しすることが考えられます。
結論
三井化学のフェノール事業撤退は、原料価格の高騰と海外メーカーとの競争激化による採算性悪化が主な要因です。この撤退は、国内の関連企業や業界に供給不安や価格競争の激化などの影響を及ぼす可能性があります。今後、国内化学産業が持続的に発展するためには、高付加価値製品への転換や生産効率の向上など、戦略的な取り組みが不可欠です。同時に、政府や業界全体での支援と協力が求められています。
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